Last updated on Nov,2003:洋彰庵
【赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)】
「精進料理をいただく心構え」
心を込めて作られた料理は、季節に見合った桶に入れられ、庫院 [台所] に奉られた韋駄天様と
竈の仏様の前に置かれます。そして、料理係の責任者、典座和尚は
僧堂に向かい、僧食九拝「焼香九拝」を行ないます。
九拝は、
1:「作った料理を韋駄天様に足速に僧堂に運んでいただく」という意味と、
2:修行僧に向かい、敬意を込めて召し上がれという意を表しています。
この様にして恭しく給された食事ですので、当然頂く側にも厳しい作法が示されています。
「赴粥飯法」には沢山の食事作法上注意事項がありますが、
その中からいくつか紹介します。
・話は一切しない。・きょろきょろしない。・背筋を伸ばし、坐禅を組んでいただく。
・食器の音を立てない。・食器は必ず両手で持つ。・隣の人のうつわをのぞき込まない。
・食べるときに音を立てない。・すすって食べない。・口いっぱいに食べ物を詰め込まない。
・食べ物を残してはいけない。・もっと欲しそうな態度をとらない。・舌で口囲をなめない。
・皆と食べる早さを合わせる。
道元禅師は当時の一流の修行道場「建仁寺」の食事風景を見て、次のように嘆きました。
「修行僧の食事の仕方は作法どころか、鳥やけだものが物を食い散らかすようだ」・・と
道元禅師の努力により、「典座教訓」「赴粥飯法」にて
修行僧の食事作法はとても美しく完成され、茶の湯の作法などにも影響を与える
教訓や飲食方法の指針となったのです。
「いただく時」五観の偈(ごかんのげ)を唱える
修行僧が食事の際に唱える五観の偈は、仏道修行としての食事をいただく精神を表しています。
候聞遍槌、合掌揖食、次作五観
- 一 計功多少量彼來処
- 二 忖己徳行全欠応供
- 三 防心離過貧等為宗
- 四 正事良薬為療形枯
- 五 為成道故今受此食
遍槌を聞くを候ち、合掌し揖食して、次に五観を作す。
★ 一には、功の多少を計り彼の来処を量る。 (素材のこと)
★ 二には、己が徳行の全けつをはかって、供に応ず。(反省)
★ 三には、心を防ぎ、過るを離るる事は貪等を宗とす。(3)
★ 四には、正に良薬を事とするは、形枯を療ぜんが為なり。
★ 五には、成道(道業)を成ぜんが為に今此の食を受く。
- 1:今、目の前にある食事が出来上るまでの手数を思い、その食材が如何にして
自分の前に出されたかの経路を思え、という訓。食材となった他のいのちの犠牲の上に
人間の命が成立していることを理解し感謝しよう。(といった内容)
- 2:には多くの人の努力と供養によって、この食事を得ているが、
自分は食を受けるに足りる正しい行いをしただろうか?
と思い考え反省しよう。(といった内容)
- 3:迷いや過ちを犯さないように、貪り(むさぼり)・怒り・愚かさ、の
3つをなくすように心がけなさい。(といった内容)
- 4:食事というものは良薬である。身を維持し痩せて衰弱するのを防ぐ。
ゆえに大切にして良薬と思っていただきなさい。 (といった内容)
- 5:仏道を成就するという目標の為にも、
身を養うこの食事をいただきなさい。(といった内容)
続 次に中村信幸先生の赴粥飯法の項目のみを掲載しておきます。
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